わかたけみかんばこ。1
「足元気をつけろよ、タケノコ」
言った瞬間、空気を切る音がして若竹は咄嗟に抱えていた肌掛け布団を前方に投げ出した。
若竹自身もその勢いのままに前転する。
柔らかな布団に包み込まれるように転がって着地すると、
背後か夜の静寂に紛れ込む程の小さな舌打ちが聞こえた。
苦笑しながら振り向く。
「おにーさまに向かって舌打ちは無いだろう、弟よ」
「タケノコって言う限り有りだ、バカ竹」
月明かりの下、ふくれっ面をさらした弟――虎次郎の
幼さの抜け始めた面立ちを見上げて若竹は微かに笑った。
「何で嫌がるかなぁ。合ってるじゃん。とーちゃん竹蔵の子供で即ち『竹の子』」
「嫌なものはい・や・だ! 第一、その理屈だったらバカ竹だってそうだろ?」
「じゃ、折半するか。俺がタケで、お前がノコ」
「―――〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
殺気までとはいかないものの、膨らんだ怒気。
若竹はニ撃目が飛んでこないうちに立ち上がった。
人差し指と中指だけを立てた右手で敬礼の仕草をして即座に身を翻す。
「お前元気っぽいから、テスト勉強でお疲れの兄さんに孝行して。布団ヨロシク!」
**********************